まただ。
運転中、左腕が急にかゆくなった。
信号待ちで袖をめくると、皮膚が赤く盛り上がっている。
中心には、蚊に刺されたような小さな膨らみ。
その周囲まで、ぼんやり赤い。
「車の中に蚊がいる?」
私は窓を見た。
閉まっている。
長袖も着ている。
それでも発疹は、確かに腕に出ていた。
最近、こんなことが何度も続いている。
朝、家を出る前。
仕事中。
買い物の途中。
そして車に乗っている時。
突然、蚊に刺されたような膨らみが現れる。
かゆい。
少し熱を持つ。
ところが一時間ほどすると、何事もなかったように消えてしまう。
跡もない。
赤みもない。
まるで最初から何も起きていなかったように。
家族に見せようとしても、帰宅する頃には消えている。
「また虫じゃない?」
そう言われるたび、私は首を横に振った。
「デニムの下にも出るんだよ」
先日は、太ももに三つ並んでいた。
厚いデニムを履いていた。
肌は外へ出ていない。
別の日には、長袖の内側。
背中。
ウエストのゴムが当たる場所。
虫が入り込んだと考えるには、あまりにも場所がおかしかった。
それでも周囲は軽く笑った。
「気にしすぎじゃない?」
「虫に好かれてるんでしょ」
私も最初は笑っていた。
だが、回数が増えるにつれ、笑えなくなった。
食べ物のアレルギーか。
洗剤か。
車のシートか。
何か重い病気のサインではないか。
ネットで調べるほど、怖い言葉ばかり増えていった。
ある日、仕事中に手首が強くかゆくなった。
見ると、時計のベルトに沿うように赤い膨らみが出ていた。
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