今朝、いつものように会社に行って、
オフィスのドアを開けた瞬間、
空気がいつもと違うのが分かりました。
普段なら、その時間にはもう
隣の席のモニターがついていて、
彼はヘッドホンをして、
片手でキーボードを叩きながら、片手でお茶を飲んでいる。
でも今日は、椅子が、空っぽでした。
有給じゃない。
退職したわけでもない。
二度と戻ってこない「空席」でした。
彼は 38 歳。
同じエンジニアで、同じようにコードを書き、
同じようにバグに追われていた人です。
昨日の昼間まで、
社内チャットに普通に返信していました。
「この仕様こうした方が良くない?」
「テストデータもう少しちょうだい。」
夕方になって、
「ちょっと胸が苦しいから、今日は早めに上がるわ。」とメッセージを残して、
そのまま会社を出たそうです。
それが、最後でした。
救急車が来たときには、
もう手遅れだったと聞きました。
彼の席に行ってみると、
モニターには昨日のままのコードが映っていました。
まだ書きかけの if 文。
カーソルだけが、むなしく点滅している。
デスクの端には、
コンビニで買ったであろうペットボトルの緑茶。
飲みかけのまま、そこに置かれていました。
まるで「ちょっとコンビニ行ってくる」と言って
そのまま戻ってこなかったみたいに、
全てがそのまま止まっている。
でも止まったのは仕事じゃなくて、
彼の時間でした。
彼は、うちのチームで一番まじめな人でした。
障害が起きれば、誰より早くログを見に行く。
リリース前は、言われなくても残ってテストをする。
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