今日は、九月のあるお昼にあった出来事を、ちょっと本気で聞いてほしいです。
その日、ナースステーションの電話が鳴りました。
「こちら病棟です。これから感染性ショックの患者さんが集中治療室に入ります。
ベッドと人工呼吸器の準備をお願いします。」
電話を切った瞬間、空気が少しだけ重くなりました。
誰も「大変だね」なんて言いません。
ただ、全員が一斉に動き出す。
エアマットを敷いて、モニターを立ち上げ、
人工呼吸器、吸引、輸液ポンプ、昇圧剤。
一つ一つ、チェックしていく。
集中治療室のスタッフにとって、
こういう「いつ来てもおかしくない命」は、決して珍しくはありません。
でも、慣れたことなんて、一度もありません。
しばらくして、一般病棟の看護師さんがストレッチャーを押してやってきました。
乗っていたのは、70代後半くらいのおばあちゃん。
大腸がんの手術をしたあとで、
この数ヶ月、何度も入退院を繰り返していたと聞きました。
顔は真っ赤に上気し、汗が滝のように流れている。
息は浅くて速い。
ご本人は両手で酸素マスクを握りしめているけれど、
どう見ても「吸えている」感じがしない。
モニターにつなぐと、
心拍数は異常に速く、血圧はギリギリ、
パルスオキシメーターの数字は70%にも届かない。
「これはまずいな…」
誰も口には出さないけれど、
その場にいる全員が同じことを考えています。
3人がかりで、一般病棟のベッドからICUのエアマットに移乗。
言葉で書くと簡単だけど、
骨も筋肉も弱っている高齢の身体を傷つけないように、
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