初夏の生ぬるい風が羽田空港の専用誘導路を吹き抜けていた。
アスファルトの上には、国家の最高級要人を迎えるための深紅の絨毯が敷き詰められている。 その先頭に立ち、仕立ての良い英国製スーツを身にまとって悠然と構えていたのは、秋山産業グループの総帥・秋山宗一であった。
彼の周囲には、大都財閥の令嬢である妻・ゆりかを筆頭に、重役や法務チームがずらりと控えている。
総事業費二兆五千億円を誇る国家防衛サイバー暗号化プロジェクト「盾」。 その最終選定を左右する中央審査委員長――防衛省から直接派遣される全権司令官を迎えるため、宗一自らが出迎えの場に臨んでいた。
「会長、いかなる高官であれ、人間である以上は必ず値段がつきます。すでにケイマン諸島とスイスの口座を経由した工作の手はずは整っております」 秘書室長が耳元でそう囁くと、宗一の口元には冷笑が浮かんだ。
彼にとって、法や道徳など買収可能な些事にすぎない。 二十二年前、極貧の木造アパートに若き妻と生まれたばかりの赤ん坊三人を置き去りにし、妻の命を削って開発した暗号技術のコアデータを奪い取って財閥の婿養子へと上り詰めたあの日から、宗一の信条は揺らいでいなかった。
「金と権力こそが正義であり、敗者は踏み台にすぎない」と。
轟音とともに、要人専用の輸送機が滑走路へ滑り込んできた。 タラップが降ろされ、ハッチが重々しく開く。
護衛のSPたちが整然と敬礼を捧げる中、まず姿を現したのは、洗練されたダークスーツを纏い、冷徹な知性を漂わせる三人の若者たちだった。 一人は防衛省の技術監察官、一人は財務監査官、そしてもう一人は特捜部から出向した主席検事。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=AjMlaUSkKlQ,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]