電車のドアが閉まった瞬間、私は思わず二度見した。
小さな男の子が——
ベージュのハイヒールを履いて立っていた。
その隣には母親らしき女性。
彼女の足元は、明らかにサイズの合っていない子ども用のスニーカー。
一瞬、車内の空気が「?」で止まった。
でも次の瞬間、私は気づいた。
これは“変な光景”じゃない。
とても静かな、優しい出来事の途中なのだと。
電車が揺れる。
男の子はぎこちなくバランスを取りながら、しっかりとつり革を握っている。
ヒールは大きく、明らかに歩きにくそう。
それでも真顔で、まっすぐ前を見て立っている。
お母さんは片手でポールを持ち、もう片方の手をそっと男の子の背中に添えていた。支えるというより、見守る手つき。
近くにいた女性が小声で言った。
「靴擦れ、かな…」
たぶんそうだろう。
久しぶりのお出かけで、少し無理をして履いた靴。
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