夫と離婚して、わずか八日後のことでした。
新しい部屋で、ようやく静かな朝を迎えようとしていた私のスマートフォンが鳴りました。画面に表示された名前を見た瞬間、胸の奥に重い記憶がよみがえります。
元夫・佐伯工事でした。
「母さんがVIP病室に入院した。一泊五万円だ。お前が払うことにしておいたから」
電話の向こうの声は、まるで当然の決定事項を伝えるような口調でした。
さらに背後からは、元義母の佐伯文江の楽しそうな声が聞こえてきます。
「本当にいい部屋ね。やっぱり長男の嫁がしっかりしていると、老後も安心だわ」
妹の美香も同調するように笑っていました。
「美和子さんは病院にも詳しいから、全部任せておけば大丈夫よ」
私は怒りをぶつけませんでした。
ただ静かに、テーブルの上に置かれた一冊のファイルへ視線を落としました。
そこには、八日前に弁護士を通して成立した離婚協議書が入っていました。
そこには明確に書かれていたのです。
「佐伯文江の医療費、介護費、保証責任について、美和子は一切負担しない」
二十九年間、私は「家族だから」という言葉に縛られてきました。
文江が白内障の手術をした時も、膝の手術をした時も、病院へ駆けつけたのは私でした。
仕事を終えて病院へ向かい、夜通し付き添う。
自分の給料から医療費を立て替え、後から工事に請求しても返ってくる言葉はいつも同じでした。
「家族なんだから、細かい金のことを言うなよ」
文江も当然のように言いました。
「長男の嫁なんだから、それくらい当たり前でしょう」
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=E9g-Xl28clU,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]