自衛隊の駐屯地祭の会場の外で、「自衛隊は反対!」と声を張り上げる抗議団体。その前に、制服姿の一人の女子高生が静かに歩み寄りました。
拡声器を握るリーダーの前に立った彼女は、驚くほど落ち着いた声で尋ねます。「地元の人ですか?」と。男が「いや、全国から集まった」と答えると、彼女は少し間を置いて、こう続けました。
「私は神戸の人間です。
電車に乗ってここまで来た理由、わかりますか?」
その場に重い空気が流れる中、彼女は淡々と、しかし力強く語り始めます。
「地震の時、助けてくれたのは、ここにいる人たちでした」
瓦礫の中で声をかけてくれた隊員のこと、寒い夜に炊き出しをしてくれた人のこと。彼女の言葉は次第に涙声に変わっていきました。
「あんたらにわかるか?消防車が来ても、ただ通り過ぎていくだけの絶望感が。でも、ここの人らは歩いて来てくれはったんや」
彼女は、ただ「お礼を言いに来た」のです。
少女の魂の叫びは、その場にいた誰もが言葉を失うほどの重みを持っていました。抗議活動家たちは返す言葉もなく、静かにその場を去っていきました。
そして、少女が駐屯地の門をくぐった瞬間、守衛の隊員は、直立不動の敬礼で、彼女の勇気と感謝の気持ちに応えたのです。