ある大手商品会社の会長であるおばあちゃんには、毎朝必ず目にする親子がいた。それは、古びたアパートから出てくる父親と、ランドセルを背負った小さな男の子。父親はランドセルの紐を整え、軽く背中を叩いて、「いってらっしゃい」と見送る。ごく普通の光景のように思えるが、その何気ない姿がなぜかおばあちゃんの心に残った。
毎日のようにすれ違うその親子の姿を、おばあちゃんは無意識のうちに気に留めていた。
しかし、その日、普段と変わらぬ朝の通勤中、偶然、会社のエレベーター前で誰かとぶつかってしまった。床に散らばる書類を慌てて拾う男性。顔を上げると、そこにいたのは、あの親子の父親だった。
「こんなところで会うなんて…」とおばあちゃんは心の中で呟いた。彼が必死に書類を拾い集める姿が、どこか切なげに見えた。それが一瞬だったとしても、その後の印象は消えなかった。数日後、今度はコンビニ前のベンチでおにぎりをかじりながらパソコンを操作している彼を見かけたおばあちゃん。彼が一人で、真剣に何かをしている様子がまた心に残った。
その日の帰り、おばあちゃんは部長に尋ねた。「あの方、うちの関係者かしら?」

部長は少し驚いた様子で答えた。「ええ、パートナー会社のデザイナーで、現在、短期プロジェクトに参加しています。」
それからもおばあちゃんは何度か彼を見かけた。夜のコンビニで、電車の中で、仕事帰りの公園で。
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