テレビ業界は「NO」を突きつけた。
しかし、有吉は反対を押し切り
決して諦めなかった。
認知症を公表して以降、
テレビから姿を消していた蛭子能収を
有吉はもう一度番組に呼ぼうとしたのだ。
テレビ業界は
「認知症の人を起用するのは難しい」
と難色を示したが
有吉は「ぜひ、またご一緒したい」
と再三にわたり出演を懇願し
業界の慎重な姿勢と戦い続けた。
そして、ついに――再会が実現した。
番組に現れた蛭子は、
かつてのような毒舌はなく
「今は麻雀もパチンコもやらなくて、
自然の花とか見るのが楽しい」と穏やかに語った。
すると有吉は、
「真人間になりましたね。
あんな不良だったおじさんが」
とツッコミを入れ、
二人は温かく笑い合った。
蛭子が描いた手描きの絵を
結婚祝いとして受け取った有吉は
「すげえ! ヘタ! けど嬉しい!
最高! うわああああ!
でも、これが蛭子さんの遺作かな」
と、いつもの毒舌で心から喜んだ。
すると蛭子も、
「それ、そうなるかもしれないね」
とニヤリと笑った。
有吉は、そんな蛭子への思いを語った。
「ダメなとこも、素敵なとこも……
全然変わってない。
僕は蛭子さんのことが大好きなんです。
だから心の中では嬉しくて泣いてました」
