「離婚したなら、あなたがこの家を出て行きなさい」――その言葉は、離婚届が受理された翌日の午後、私名義の三億円の豪邸で、元姑の久美子さんが当然のように口にした。
リビングの中央には、彼女が勝手に詰めたダンボールが四つ、整然と並んでいた。中には私の服、仕事用の書類、寝室の引き出しに入れていたアクセサリーケース、そして父の形見の万年筆まで、乱暴に押し込まれている。
白いシャツの袖が箱の隙間からはみ出し、書類ファイルの角は折れていた。
私は玄関から静かにリビングへ入り、その光景を見下ろした。離婚したばかりの家に戻ってきたら、自分の荷物が先に追い出される準備をされていたのだ。それでも、不思議と驚きはなかった。むしろ、ついにここまで来たのだと、胸のどこかで冷静に思っていた。
本革ソファに深く腰掛けていた久美子さんは、私の父への贈り物として買った有田焼の湯飲みを手にしていた。まるでこの家の主は自分だと言わんばかりの表情だった。
「聞こえなかったの? あなたはもう高橋家の嫁じゃないの。離婚した女が、いつまでも息子の家に居座るなんてみっともないわ」
私は視線を上げた。
「息子の家、ですか」
久美子さんは鼻で笑う。
「当然でしょう。ここは直人とあなたが夫婦で暮らしていた家よ。夫婦で住んでいたなら、高橋家の家と同じことじゃない」
その言葉を聞いた瞬間、私は大きな吹き抜けの窓へ目をやった。午後の光が、白い床に真っ直ぐ差し込んでいる。地下駐車場、ゲストルーム、ホームエレベーター、防犯カメラ――すべて、父の死後に私が相続した資金と、自分で積み上げた投資益で購入したものだった。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=jtLwakMX2-M,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]