離婚届が受理されてから三日目の朝だった。
私はリビングのソファに座ったまま、足元に積まれた三つの段ボールを見下ろしていた。中には私の服、仕事の資料、洗面台に置いていた化粧品まで、久美子さん――元姑が勝手に詰め込んだものが乱暴に押し込まれていた。白いブラウスの袖が箱の縁からはみ出し、見るからに急ごしらえの「追い出し準備」だと分かる。
その前で、久美子さんは私の母に電話をかけていた。しかも、わざとスピーカーにして。
「お宅の娘さん、離婚したのにまだうちの家に居座っているんですよ」
軽い口調だった。だが、その裏には、私を恥知らずだと決めつける棘があった。
「聞こえていますか、玲子さん。離婚された娘がいつまでも高橋家にいるなんて、普通はできませんでしょう? 今日中に、この厄介者を引き取ってください」
久美子さんは、母の名前を妙に親しげに呼んだ。だが、その声は親しみではなく、見下しに満ちていた。
リビングには、元夫の優馬、そして彼の父の正一さん、妹の梨花さんもいた。梨花さんは腕を組み、私の段ボールをつま先で軽く押している。
「これだけ荷物まとめてあげたんだから、感謝してほしいくらいよね。離婚したのに豪邸にしがみつくなんて、みっともない」
優馬は窓際に立ったまま、私と目を合わせようとしなかった。けれど、母への電話を止めることもしない。
「もう夫婦じゃないんだ。普通はお前が出て行くだろう」
その言葉には、私を気遣う気持ちは欠片もなかった。ただ、面倒なものを早く片づけたいという苛立ちだけがあった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=LocNuXo6Vpk,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]