「お前の妹と結婚するわ」
彼からそう告げられた瞬間、私の中で何かが音を立てて崩れ落ちた。
憧れの海外挙式、一生の誓い。全ては彼と叶えるはずだった。しかし現実は、スマホゲームに没頭し、式の打ち合わせにも来ない彼に振り回される日々。相談しようとすれば「親父とお袋に聞いてくれればいい」と放り投げ、挙句の果てには不機嫌になって無視をする始末。
私の心はすり減るばかりだった。
家族に相談しても、「男の人ってそんなもんよ」と誰も真剣に取り合ってくれない。
そんな彼が珍しく、「気球挙式なんてどう? きっと一生の思い出になるよ」と笑顔で提案してきた。私のために調べてくれたことが嬉しくて、私はワクワクしながら承諾した。
そして迎えた挙式当日。
バージンロードを歩き、いよいよ気球に向かおうとしたその時、突然彼に背中を突き飛ばされた。
「誰がお前なんかと結婚するかよ! 俺は妹子と結婚する!」
彼はそう叫ぶと、私の妹の手を取り、満面の笑みで気球に乗り込んだ。
妹もまた、幸せそうに彼に寄り添っている。二人は気球の上で熱烈なキスを交わし、参列者たちの視線は一斉に私に突き刺さった。
気球挙式のアイデアは、実は妹の発案だったらしい。妹たっての希望で、彼が私に提案したのだ。
控室に戻ると、両親と義両親が青ざめていた。慰めてくれるのかと思いきや、母は「この子はどうでもいいんです! 妹を嫁にしてください!」と義両親に懇願し始めた。
愕然とした。私なんて最初からどうでもよくて、妹のことしか考えていなかったのだ。
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