自衛隊と聞けば、国を守る屈強な組織というイメージが強いですが、彼らには時として、野生との壮絶な戦いの歴史も存在します。特に、北海道の部隊とヒグマとの間には、数々の伝説的な逸話が残されています。
その中でも最も有名なのが、通称「熊鍋事件」です。1970年、北海道鹿追町でヒグマの出没が相次ぎ、住民の安全を脅かす事態となりました。
これを受け、陸上自衛隊第二師団は、地元の猟友会と協力し、大規模な「熊狩り」を実施することを決定します。
その結果、演習場内で発見されたヒグマ1頭を無事捕獲。しかし、話はここで終わりませんでした。「もったいない」—その一言で、捕獲したヒグマは解体され、隊員と猟友会のメンバーで熊鍋にして美味しく頂いたというのです。このワイルドすぎるエピソードは、自衛隊の歴史に燦然と輝く(?)伝説として、今なお語り継がれています。
しかし、自衛隊とクマの戦いは、笑い話だけではありません。
北海道標津町では、人里に大量のクマが降りてきて、ベテラン猟師2名が命を落とすという痛ましい事件が発生。この時、派遣要請を受けた自衛隊第5師団は、自衛隊車両で小学生の送迎を行うなど、住民の安全確保に奔走。
さらに、地元の猟友会と協力し、わずか1ヶ月足らずで25頭ものヒグマを駆除し、圧倒的な戦力で事態を収束させました。
また、ある駐屯地では、レンジャー助教3名が訓練の視察中にヒグマに遭遇。1人が草むらに引きずり込まれるという絶体絶命の状況に陥りますが、なんとその隊員は、素手でクマを返り討ちにして生還。後日、隊員たちには「(クマに勝ったからといって油断せず)みんな注意するように」という、にわかには信じがたい注意喚起がなされたといいます。
駆除し、食べ、時には素手で戦う。それは、北の大地で暮らす人々の生活と安全を守る、自衛隊のもう一つの顔なのです。