楓出は初めて付き合って間もない志の家に遊びに行った。二人は楽しく過ごしていたが、突然、志の携帯にメッセージが届いた。画面に表示されたメッセージを見た志は少し顔色を変え、楓出に向かって言った。
「母さんがもうすぐ帰ってくる。今は友達ってことにしよう。」
楓出は驚き、少し戸惑いながらも口を開いた。「え、私たち付き合ってるって、まだ言ってないの?」
志は少し恥ずかしそうに答えた。「結婚をせかされるから、後でちゃんと言うつもりだよ。」その言葉に楓出は少し不安な気持ちを抱えたが、どうしても彼の言うことに従っていた。
数分後、志の母親が家に帰ってきた。志は平然と彼女を紹介した。
「母さん、こっちは僕の友達の楓出。」
母親は楓出をじろじろと怪しむように見つめていた。その視線に楓出は少し気まずさを感じながらも、微笑んで頭を下げた。しかし、母親はその後、予想だにしない言葉を口にした。
「あら、楓出って、前にリップスティック忘れてった子よね。」
楓出はその言葉に驚いて目を大きく見開いた。「え、私はリップなんて忘れたことありませんけど…。」
すると、母親はにやっと笑いながら、さらに言った。「じゃあ、数日前にベッドの下に落ちてたリップスティックを見つけた子かしら?」
楓出の顔が青くなり、瞬間的に息を呑んだ。まさか…そんなことを知られているなんて思いもしなかった。彼女はすぐに言葉を探し、言い訳をしようとしたが、言葉が出てこなかった。
その時、志も母親の言葉に驚いた様子で振り返り、楓出の方を見た。
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