世界を欺いた「ホラ吹き」でありながら、なぜか憎めない伝説の詐欺師――それがショーンKという男です。
彼の正体は、熊本生まれの純粋な日本人、川上伸一郎。かつて地元で「ホラッチョ(ホラ吹き)川上」と呼ばれていた少年は、大人になり、その嘘を芸術の域にまで高めました。
彼は「ハーフ顔への整形」と「独学で磨き上げたネイティブ英語」という、血の滲むような努力で全身を偽造。
中身は高卒でありながら、「ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得」「パリ大学留学」という華麗なる経歴を掲げ、インテリジェントな経営コンサルタントを見事に演じきったのです。
その甘いマスクと魅惑の低音ボイス、そして「それっぽい」コメント力を武器に、彼は夜のニュース番組のメインキャスターの座を掠め取りました。お茶の間は完全に、彼の作り出した完璧な虚像に酔いしれていたのです。
しかし、崩壊の時は訪れます。週刊文春によって「経歴は全部嘘」「本名は川上伸一郎」というあまりに恥ずかしい真実が暴かれ、彼は芸能界から一発退場を食らいました。
ところが、物語はここでは終わりません。そのあまりに完璧すぎた仕事ぶりと貫禄に、ネット上では批判を超えて感嘆の声が上がったのです。
「嘘をつくためにここまで勉強したのは凄すぎる」「努力の方向音痴」と。
あのお笑い界のドン・松本人志でさえ、「高卒であの知的な空間を支配していたのなら、それはもう実力だろ」と唸り、逆説的にその才能を認めるほどでした。彼は経歴こそ偽物でしたが、演じきったその力量だけは、ある意味で本物だったのかもしれません。