「母さん……今日の運動会には、来ないでほしいんだ」
電話の向こうから聞こえた息子・治の言葉に、私は握っていた箸を止めた。
時計は朝5時を少し回ったところだった。
今日は初孫・結衣の大切な運動会の日。私は前日の夜から準備を続け、朝早く起きて、孫が喜ぶ顔だけを思い浮かべながら弁当を作っていた。
鶏の唐揚げは二度揚げして外はカリッと、中は柔らかく。
甘めの卵焼きには、結衣がいつも「おばあちゃんの味」と言ってくれた思い出が詰まっている。おにぎりには梅干しを入れ、一つ一つ心を込めて握った。
しかし、そんな私の努力は、息子の次の言葉で簡単に崩れ落ちた。
「母さんの弁当はいらないから」
続いて聞こえてきた嫁・佳代の冷たい声。
「うちの両親だけで十分なんです。正直……お母さんがいると恥ずかしいんですよ」
胸の奥がズキリと痛んだ。
私は治を育てるために、人生のほとんどを捧げてきた。
夫を亡くしてから、女手一つで息子を育て、大学進学のために800万円以上のお金を工面した。結婚するときには300万円を援助し、家を買う時には頭金として800万円を渡した。
「母さんのおかげで夢が叶ったよ」
かつて治は、涙を浮かべながらそう言ってくれた。
孫の結衣が生まれてからも、私は毎月教育費を援助し、週に何度も送り迎えをした。幼稚園の行事にも欠かさず参加し、病院の付き添いもしてきた。
それなのに今、私は「恥ずかしい存在」になっていた。
思い返せば、半年ほど前から少しずつ変化は始まっていた。
正月には三日間かけて作った手作りのおせちを「古臭い」と言われた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=elwcV78Noj4,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]