妹、美岬の入社式。
会場は地元でも名の知れた高級ホテル。天井のシャンデリアが眩しいほど輝いていた。妹は新品のスーツに身を包み、胸元の名札を何度も確かめていた。
十五年前、両親を失った妹を親代わりに育ててきた俺にとって、その姿は誇りそのものだった。
俺の名は斉藤誠一郎。地元の大手企業、斉藤グループの会長だ。製造からIT、小売、サービスまで、幅広い事業を展開している。だが、妹にはその肩書きを一切明かしていない。自分の力で社会に立ってほしかったからだ。
会場が静まり、始まりを告げる鐘が鳴った。入社式が始まり、壇上に立ったのは中央リクルートサービスの社長、田村大輔だった。社長は薄く笑いながら言った。「本日は特別な企画があります」。社員たちがざわめく中、俺は嫌な予感がした。
田村社長が履歴書を手に取り、一人ひとりの学歴を読み上げ始めた。「君は、聞いたことない大学だな」「このレベルでよく来れたな」。笑いが起き、俺は顔をしかめた。
笑う側には逃げ場がある。笑われる側には逃げ場がない。
そして、美岬の番が来た。
「地方の公立大か。現場仕事向きだな」。
その言葉で、美岬の頬が赤く染まり、肩が震えた。
社長は続けた。「君みたいな学歴の子は営業や企画は無理だよ」
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
引用元:,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]