人々の命を守るための、大切な一日のはずだった東京都三鷹市で行われた総合防災訓練。地域住民と関係機関が一体となり、万が一の災害に備える。その一環として、自衛隊による炊き出し訓練も予定されていた。
しかし、その穏やかな訓練の場に、不協和音が響き渡る。
「迷彩服でカレーはやめてくれ!」「迷彩服は学校にこないで!」
一部の団体が、自衛隊の参加に猛然と反対の声を上げたのだ。
彼らは「迷彩服や銃の携行は軍事訓練につながる」と主張し、ついには小学校の門前に「カレーライスは住民の手で 自衛隊ではなく専門の救助隊を」と書かれた横断幕を掲げ、抗議活動を始めた。
罵声ともとれる言葉が飛び交う、異様な雰囲気。しかし、その目の前で、自衛隊員たちは一切の感情を見せず、ただ黙々と自らの任務を開始した。
彼らの動きに、一切の無駄はなかった。文句を言う暇があるなら、手を動かす。非難の声を背に受けながら、彼らは流れるような手際で準備を進め、あっという間に約1000人分もの温かいカレーを調理。同時に、被災者の心と体を温めるための入浴施設も、迅速に設営していく。
その最中、天候までもが彼らに試練を与えた。
突然の大雨が降り出し、グラウンドはぬかるみ、足元は泥だらけになる。しかし、隊員たちの動きは止まらない。ずぶ濡れになりながらも、彼らは炊き出しを続け、訓練が終われば、雨の中、泥にまみれた機材を丁寧に清掃し、後片付けまで完璧にこなしていった。
その姿を、多くの市民が見ていた。イデオロギーを叫ぶ人々の横で、ただひたすらに、国民のために汗を流す自衛隊の姿を。
「実際に被災者のお腹を満たす方法を提示してから反対してくれ」「横断幕の漢字、間違ってるけど何人?」
世間の声は雄弁だった。災害の現場で本当に必要とされるのは、空虚な言葉ではない。目の前の命を救うための、具体的な行動だ。
批判に反論することなく、ただ黙々と任務を遂行する。その背中は、どんな言葉よりも力強く、彼らの存在意義を物語っていた。