最初は、ただの口内炎だと思った。
妹もそう思っていた。
前の日に彼氏と外で食事をしていた。
辛いものも食べた。
冷たい飲み物も飲んだ。
だから、舌が荒れただけだと考えた。
でも違った。
朝になっても、しびれは消えなかった。
むしろ強くなっていた。
舌の表面には、小さな白い粒のようなものがびっしり出ていた。
妹は鏡を見ながら、声を震わせた。
「これ、何……?」
私はすぐに病院へ行くよう言った。
妹は最初、嫌がった。
彼氏に写真を送ったらしい。
返ってきた返事は軽かった。
「大丈夫だよ」
「たぶん疲れ」
「俺も前にそうなったことあるし」
その一文で、私は少し引っかかった。
“俺も前にそうなったことある”
なぜそんなに簡単に言えるのか。
なぜ病院へ行けと言わないのか。
妹を説得して、翌日クリニックへ連れて行った。
診察室で医師は舌を見た瞬間、表情を変えた。
「いつからですか?」
妹は小さな声で答えた。
「昨日の夜からです」
「誰かと接触はありましたか?」
その言葉で、妹の顔が赤くなった。
私は横で黙っていた。
医師は責めるような言い方はしなかった。
ただ静かに言った。
「念のため検査しましょう」
その数日後。
妹のスマホに病院から電話が入った。
再来院してほしい。
その一言で、空気が一気に重くなった。
診察室で医師は検査結果を見ながら言った。
「感染の可能性があります」
妹の顔から血の気が引いた。
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