「それ、ダサいっすよ。俺のセンスで切りますね」
鏡越しにそう言われた瞬間、私は思わず耳を疑った。
要望として見せた写真を鼻で笑い、担当の男は私の髪を指でつまみながら、勝手にハサミを構えた。
私はその日、ただの客としてその美容室に来ていた。
けれど本当は、別サロンで働く美容師だ。
最近、この店の悪い評判がやたら耳に入っていた。
「希望と全然違う髪型にされた」
「止めてと言っても切られた」
「スタッフが上から目線で怖かった」
最初は大げさな口コミかと思った。
でも同じ業界で働く身として、あまりに気になってしまい、客として様子を見に来たのだ。
私は席に座った時点で、はっきり伝えていた。
「今日は毛先を整えるだけでお願いします。長さは絶対に変えないでください」
念のため、写真も見せた。
重さを残したまま、少しだけ整える。
それだけの、ごく普通のオーダーだった。
ところが男は写真をちらっと見ただけで、ふっと笑った。
「いや、これ古いっすね。正直ダサいです」
その言い方に、胸の奥がざわっとした。
「いえ、今日はこれでお願いします。切らないでください」
私がもう一度伝えても、男はまったく聞いていなかった。
「大丈夫っすよ。俺のセンスが一番なんで」
ニヤニヤしながら、彼は私の髪を強く引っ張った。
テンションのかけ方も雑で、頭皮が少し痛い。
しかも周りのスタッフは気づいているのに、誰も止めようとしない。
一人は目をそらし、もう一人はレジのほうに逃げるように移動した。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=zVtKNPp3Tfk,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]