「実家の会社が成功した今、お前と結婚する理由はないw」――その言葉を、私は結婚式まであと一か月という夜に、白石ユーマの口から聞くことになった。
場所は白石家の応接間だった。磨き上げられた大理石の床、壁に掛けられた高価そうな絵画、ガラスのテーブルの上には、まだ封も切られていない招待状が数枚並んでいる。その隣には、私が苦労して選んだ式の席次表のサンプルまで置かれていた。
一週間前までユーマはそれを見て、「みおがいてくれて本当に助かるよ」と笑っていたのに、今ではその同じ口が、私を切り捨てるために動いている。
「どういう意味?」
私はできるだけ平静を装って尋ねた。感情を荒げれば、きっとこの人たちはこう言うだろう。女は感情的だ、婚約破棄されて取り乱すのか、三十三歳にもなってみっともない、と。だから私はバッグの中で、そっとスマホの録音を開始した。
ユーマはソファに深く腰掛け、足を組んでいた。以前の彼なら、少なくとも私の前でそんな態度は取らなかったはずだ。
「そのままの意味だよ」
彼は肩をすくめた。
「うちの会社、知ってるだろ。統合医療グループとの契約が決まってから、状況が一気に変わった」
白石メディカル。ユーマの実家が経営する医療機器関連会社だ。五年前、私たちが付き合い始めた頃、その会社は決して順調ではなかった。納期遅れ、品質管理の甘さ、取引先との連絡不足、資金繰りの不安。ユーマはよく疲れ切った顔で私の部屋に来ては、「もうダメかもしれない」と漏らしていた。父親にも母親にも期待されて苦しい、と。
私はその言葉を信じた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=pkyTMXcILgI,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]