夫・静樹の葬儀を終えて三日後、私のスマホに懐かしくも不快な名前が表示された。
瑠璃子。
静樹の幼馴染で、かつて彼に突然逆プロポーズし、断られた女性だった。私たちが婚約していた頃の話だ。
「はるかさん、久しぶり。元気?」
夫を失ったばかりの私に向けるには、あまりにも軽い言葉だった。
「葬儀にも来なかったのに、何の用?」
そう返すと、瑠璃子は少しも悪びれずに言った。
「終わってから知ったのよ。飲酒運転の車に巻き込まれたんだって? 静樹、私と結婚していれば生きてたかもしれないのにね」
その瞬間、胸の奥が冷たくなった。
悲しみで崩れそうな心を、彼女の言葉が土足で踏み荒らしていく。
けれど、私は泣かなかった。
怒鳴りもしなかった。
静樹の名誉を守るために、感情を抑え込んだ。
すると瑠璃子は、待ってましたとばかりに本題を切り出した。
「実はね、私の娘、静樹との間にできた子なの」
私は画面を見つめたまま、静かに息を吐いた。
「認知してほしいの。父親の遺産を一円ももらえないなんて、おかしいでしょう?」
瑠璃子は、私が取り乱すと思っていたのだろう。
夫の死後に隠し子を突きつけられ、泣き叫び、怒り狂い、崩れ落ちる。
そんな反応を期待していたに違いない。
けれど私は、ただ一つだけ聞いた。
「娘さん、今いくつ?」
「四歳よ」
その答えに、私は思わず小さく笑ってしまった。
瑠璃子はすぐに怒った。
「何がおかしいの?」
「妊娠したのは、だいたい五年前よね」
「そうよ。だから静樹の子なの」
私はゆっくりと文字を打った。
「その頃、静樹は日本にいなかったわ」
瑠璃子の返信が止まった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=HxkWT-pQxSg,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]