「結婚したら、女は家庭に入るものだろ」
俊樹は、いつもそう言っていた。
けれど、私は自分の仕事を諦めるつもりなどなかった。
大学時代から目指していた仕事だった。努力してやっと手に入れた場所であり、私にとってはただのお金を稼ぐ手段ではなく、自分自身の存在価値を感じられる大切なものだった。
しかし、俊樹にはそれが理解できなかった。
ある日のことだった。
私は在宅勤務になったばかりで、自宅の一室を仕事部屋として使っていた。会社の建て替え工事の影響で、しばらく出社できなくなったためだ。
机の上には仕事の書類、パソコンの横には重要なデータが入ったメモリー。
それは会社にとっても、私自身にとっても絶対になくしてはいけないものだった。
ところが――。
帰宅した俊樹は、何食わぬ顔で言った。
「お前の部屋にあった紙とかメモリーなら捨てたぞ」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「……捨てた?」
「そう。あまりにも汚かったから掃除してやったんだよ」
血の気が引いた。
「あれは仕事の大事なデータだったの。どうして勝手に捨てるの?」
そう問いかけても、俊樹は悪びれる様子すらなかった。
「仕事のデータなんて知らないだろ。そんな大事なものなら会社に置いておけよ」
さらに続けた。
「そもそも、結婚した女が仕事ばかりしてるのがおかしいんだよ」
耳を疑った。
今まで私の仕事について何も言わなかった俊樹が、突然そんなことを言い始めたのだ。
「結婚したら普通は家庭を優先するものだろ。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=qmdF-zCVC5g,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]