故郷へ向かう列車の窓から流れる景色を、私は黙って見つめていた。
10時間という長い旅だった。若い頃なら何でもない距離だったかもしれない。しかし、38年間家族のために生きてきた私の体には、その時間が重く感じられていた。
今回の帰省は、久しぶりに息子と一緒に故郷へ戻るためのものだった。
私は心のどこかで期待していた。
「母さん、長旅になるから体を大切にしてね」
そんな一言を、息子の口から聞けるのではないかと思っていた。
しかし、現実は私の想像とは大きく違っていた。
駅で切符を受け取った瞬間、私は言葉を失った。
息子が私に渡したのは、普通の座席ですらない「立ち席」の切符だった。
10時間、座ることもできず、混雑した車内で立ち続ける切符。
一方で、息子の妻の家族7人には、ゆったりとしたグリーン車の席が用意されていた。
その事実を知った瞬間、胸の奥が冷たくなった。
私は息子に尋ねた。
「どうして母さんの席は立ち席なの?」
息子は少し困ったような顔をした後、淡々と言った。
「ごめん。でもグリーン車は人数分しか取れなかったんだ。妻の家族は遠くから来てくれるから、快適に過ごしてもらいたかった」
その言葉を聞いた瞬間、私は何も言えなくなった。
妻の家族を大切にすることが悪いわけではない。
誰かを尊重することも、家族との付き合いを大切にすることも理解できる。
しかし、私は息子の母親だった。
38年間、彼のために人生を捧げてきた。
夜泣きをすれば眠らずに抱き上げ、病気になれば仕事を休んで看病した。
学校へ行く日には毎朝弁当を作り、進学のためには自分の欲しいものを我慢してお金を貯めた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=sHBbT5MWbdE,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]