幼い頃の私は、父という人を少し怖い存在だと思っていた。
父は口数が多い人ではなかった。家族の前で優しい言葉を並べることも少なく、いつも黙って仕事へ行き、疲れた体で帰ってくる。母が何か話しかけても、「うん」「そうか」と短く返すだけ。そんな父の姿を見ていた私は、父は感情をあまり表に出さない人なのだと思っていた。
しかし、ある出来事をきっかけに、私は父の本当の姿を知ることになった。
母が体調を崩し、以前のように家事をこなせなくなった頃のことだった。母は周囲に心配をかけまいとして、いつも笑顔を作っていた。しかし、食事もほとんど取れず、何を口にしても「いらない」と言う日が続いていた。
そんな母を見て、父は何も言わずに動いていた。
毎日、母が少しでも食べられそうなものを探し、買って帰ってきた。特別な料理ではなくても、母が好きだったものや、昔二人で食べた思い出の味を選んでいた。
「少しだけでもいいから食べてみたら」
父のその言葉は、いつものようにぶっきらぼうだった。
でも、その声には隠しきれない心配が込められていた。
母が眠れない夜には、父はそばに座っていた。何か特別なことをするわけではない。
ただ静かに隣にいる。それだけだった。
私はその時、初めて気づいた。
父は、言葉ではなく行動で母を愛していたのだ。
ある日、母が「迷惑ばかりかけてごめんね」と父に言ったことがあった。
すると父は少し困ったような顔をして、
「何を言ってるんだ。家族だろ」
と答えた。
短い一言だった。
しかし、その言葉の中には、長い年月を共に過ごしてきた夫婦の絆が詰まっていた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=qVe4S4Zjb30,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]