ダンス教室から帰ってきた妻が、いつも石けんの香りを漂わせていることに、最初はあまり気にしていなかった。妻は昔から清潔感を大切にしているし、石けんの香りが好きだということも知っていた。それに、帰りが遅くなるのは仕事が忙しいからだろうと思っていた。だが、次第にその頻度が増していくと、少しずつ気になるようになった。
最初の頃は「今日も遅くなったね」とだけ声をかけていたが、回数を重ねるうちに、私の胸の中に疑念が生まれ始めた。
それは小さな違和感から始まり、次第に大きな疑問へと変わっていった。
妻が帰る時間が遅くなるのは、仕事だけでは説明できないことが増えてきた。毎回、家に帰ると、妻は必ずと言っていいほど「遅くなってごめんね」と笑顔で言うが、その後に漂う石けんの香りが、どうしても私の心に引っかかるようになった。最初はあまり深く考えずにいたが、段々とその香りが気になり、私の中で「何かが違う」という感覚が強くなっていった。
ある晩、いつものようにダンス教室から帰ってきた妻は、またしても石けんの香りを身にまとっていた。私は何気なく言った。
「また石けんの香りがするね。今日はどんなレッスンだった?」
その言葉に、妻は少し驚いたような顔をした後、すぐに笑顔を見せた。
「うん、今日はちょっと汗かいたから、シャワーを浴びたの。すごく気持ちよかったよ。」
でも、その返答にどこか不自然さを感じた。普段、シャワーを浴びるのは教室に着いたときか、帰宅後のことだ。だが、今日の妻の顔には何か隠しているような表情が見え隠れしていた。それが気になった。
その日、私は意を決して、妻の帰りを待つことにした。帰りが遅くなった理由や、何か変わったことがないかをしっかりと聞きたかったからだ。
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