冬の朝五時半。
吐く息は白く、まだ街灯の残る歩道には誰の姿もなかった。
田中勝也、七十三歳。
八年間、一日も欠かさず一万歩を歩き続けてきた男だ。
「健康のためには、とにかく歩け」
テレビでも雑誌でも、医者の特集でも、そう言われ続けてきた。
だから彼は信じていた。
毎日一万歩を歩く自分は、同年代の誰よりも健康なのだと。
しかし、その“常識”こそが、彼の体を静かに壊していた。
その朝、勝也は右膝に違和感を抱えていた。
いや、本当は数か月前から痛みはあった。だが、彼は無視した。
「あと二千歩だ」
スマートウォッチには八千二百四十七歩の数字。
目標達成まで、あと少し。
亡き妻・由美子は、生前いつも言っていた。
「お父さん、無理は禁物よ」
だが勝也は、その言葉を“弱さへの甘え”だと思い込んでいた。
歩けなくなったら終わり。
年を取ったら負け。
だからこそ、自分を追い込み続けた。
そして次の瞬間だった。
右膝に、雷のような激痛が走った。
「っ……!」
体が崩れた。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=Nu5Qn6_7Wt4,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]