里帰り出産を控えて、準備が整ったとき、私は思わずため息をついた。これまでの生活から少しだけ離れて、実家でリラックスできる時間を持つことができると思っていた。しかし、予想外の事態が私を待ち受けていた。
実家には、私名義の家に住む夫と義姉が同居していた。正確には、夫の実家の土地に建てた家だったが、家の名義は私のものだった。結婚してからの数年、私は夫の家に住んでいたものの、基本的には私の家として考えていた。
それでも、夫は言葉で「これは俺の家だ」と何度も言っていたが、法的には私の家だった。ところが、問題が起きたのは、その義姉が突然、私が里帰り出産をするタイミングで「私も一緒に実家に帰るから」と宣言したことだった。
義姉は、言うなれば「お客様」のような存在だった。最初は静かにしていたものの、最近ではすっかり家の中で大きな顔をしていた。その姿勢に、私はすでに何度も不満を感じていたが、今回は明らかに私のスペースを奪おうとする姿勢が目に余った。
「他人が住む部屋はない」と、義姉が私に言い放ったとき、私はしばらく言葉を失った。実家にはもともと余裕のある部屋があり、私はそこに里帰りするつもりだったのだが、義姉の言葉はそれを完全に無視したものだった。
その時、夫が不機嫌そうに言った。
「お前、どうしても出ていかないといけないのか? 野宿でもしたら?」
私は一瞬、夫の言葉に驚き、心の中でその無神経さに呆れてしまった。それでも私は冷静に、でも心の中ではすべてを見透かしたかのように心を決めた。
「わかった、じゃあ野宿することにするわ」
その瞬間、夫も義姉もどこか驚いた表情を浮かべた。
私の答えが予想外だったからだろう。しかし、私はそれ以上何も言わなかった。決して彼らに説明する必要はないと思っていたし、黙って行動で示すしかないと思った。
家を出る準備を整えた私は、結局、義姉が予想外の反応を見せた。というのも、私が何も言わずに出て行こうとすると、義姉が慌てて私を引き留めようとしたからだ。義姉は口を開けようとしたが、結局、言葉にできなかった。
私が決めたことは、もう何も変えられないと理解していたからだろう。
私はそのまま家を後にし、実家へ帰るために車を出した。夫の反応は予想通り、何も言わず、ただ黙っていた。彼が後悔するかどうか、それも私には関係なかった。
結局、私は実家でゆっくりと静かな時間を過ごし、出産を迎えることができた。夫はその後、気づいたのか、少しだけ申し訳なさそうに連絡を寄越してきたが、もう私の中ではそれに対して感情が湧くことはなかった。彼が気づくのは遅すぎたのだ。