結婚の話が具体的になってきた頃、彼は妙に「家族」という言葉を使うようになった。私にとっては、まだ“これから作っていく関係”のはずなのに、彼にとっては既に「彼の家族の一員」として扱われているような違和感があった。
その違和感が、年末年始の話題で一気に形になった。
「今年の年末年始は、私子の実家で過ごそう」
私は思わず「うん?」と聞き返した。
すると彼は、何でもないことのように続けた。
「うちの家族6人で行くから! 父、母、俺、妹二人、あと弟。賑やかで楽しいよ」
——私の実家に、彼の家族6人が“泊まり”で来る。
しかも、相談ではなく決定事項のような口ぶり。
私は一度、言葉を選んだ。相手の家族との関係は大事にしたい。でも、それと“押しかける”は違う。
「それは難しいかも。うち、広くないし、親も急には準備できないと思う」
そう伝えた瞬間、彼の顔から笑みが消えた。代わりに出てきたのは、薄い不満と、よく知っている“圧”だった。
「え、なんで? 妹たちも楽しみにしてるんだけど」
私は内心で息を呑んだ。
“楽しみにしてる”という言葉は、一見やさしい。でも実際は、断れないように縛るための鎖になる。
「妹さんたちが楽しみにしてても、うちの両親の都合もあるから。まず相談しないと」
そう言っても、彼は引かなかった。
「いや、せっかく仲良くなれるチャンスじゃん。家族ぐるみでさ。
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