元夫から「離婚したい」と言われた日のことは、今でも鮮明に覚えている。理由は曖昧、態度は妙に軽い。まるで、次の予定がもう決まっている人間の顔だった。
だから私は、必要な手続きだけ淡々と済ませた。情に縛られて時間を浪費するより、先に自分の生活を立て直すほうが大事だと思ったからだ。
――そして離婚から三日後。
スマホが震えた。共通の知人からのメッセージだった。
「元旦那、もう再婚したよ。『顔、性格、家柄、最高の嫁!』って騒いでる」
三日後に再婚。早すぎて逆に清々しい。私は不快というより、「やっぱりね」という気持ちのほうが強かった。けれど次の一文で、私は腹の奥がくすぐられる感覚を覚えた。
「写真送るね」
届いた画像を開いた瞬間、私は――本当に腹を抱えて大爆笑した。
だって、その“最高の嫁”は。
私の高校時代の同級生だった。しかも、かつて私が元夫を紹介したことがある相手。さらに言えば、昔から「見栄のためなら話を盛る」ことで有名で、SNSのプロフィールが季節ごとに別人みたいに変わるタイプの人間だった。
いや、それだけならまだ“笑う”まではいかない。
私が爆笑した理由は、もっと決定的だった。
その写真の背景――元夫が「俺の持ち家」と自慢していたタワマンのリビングで、彼女がポーズを取っていたからだ。
ああ、なるほど。
彼はまだ、知らない。
私が静かに引っ越したあと、あの部屋がどうなったのかを。
私は笑いすぎて涙が出るのを拭いながら、知人に短く返した。
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