親族への“お披露目会”と聞いたとき、私は少しだけ身構えた。夫の連れ子である拓也が結婚し、先日、赤ん坊が生まれた。夫は嬉しそうに「みんなに見せたいんだ」と言い、親戚を集めて食事会を開くことになった。
私は、連れ子との関係を無理に近づけようとはしてこなかった。礼儀は守る。距離も守る。相手が望まないなら、それでいい。そう自分に言い聞かせてきた。
けれど“お披露目会”となれば話は別だ。赤ん坊は家族の節目だし、親族の前で粗相があってはいけない。私は手土産を選び、会場の予約内容を確認し、夫が喜ぶならと当日も早めに動いた。
会場は親戚がよく集まる料亭だった。畳敷きの個室。赤ん坊用のクッションも用意され、親族たちが「おめでとう」と口々に言っている。私も笑顔で挨拶し、義叔母に席を譲った。
問題は、そのあとだった。
赤ん坊を抱えた拓也の妻が入ってきた瞬間、室内の空気が少し変わった。まだ産後間もないはずなのに、妙に強い目をしている。拓也は赤ん坊の顔を親族に見せながら、こちらをちらりと見た。すぐに薄い笑いを浮かべる。
「今日は“親族”だけでお披露目なんで」
そう言って、私の前でわざと声を落とし、しかし誰にでも聞こえる音量で続けた。
「あんたは他人だから、赤ん坊には一切会わせないw」
“w”が付くような軽さで言う言葉ではない。室内が一瞬静まり返った。私は驚いたが、顔には出さなかった。これは私の感情で返す場ではない。返した瞬間、相手は「冗談が通じない人」にすり替えるだろう。
ところがさらに、夫が追い打ちをかけた。
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