「え……何これ?」
玄関のドアを開けた瞬間、私は思わず足を止めました。
そこにいたのは、見たことのない姿をした小さな生き物。
玄関ポーチの隅。
壁と床の間にじっと張り付いていました。
最初に思ったのは、
「これ、本当に日本のヤモリなの?」
という疑問でした。
普段見かけるヤモリといえば、もっと細くて、白っぽい体をしているイメージ。
でも目の前の子は違いました。
黒と茶色の模様。
太めの体。
独特な柄。
まるで外国の写真で見るような姿でした。
私は驚いてスマホを取り出し、写真を撮りました。
逃げるかと思ったのですが、その子は動きません。
まるで、
「ここにいても大丈夫だよ」
と言っているようでした。
家族にも見せると、
「これ日本のヤモリ?」
「ペットが逃げたんじゃない?」
と、いろんな意見が出ました。
確かに、見た目だけを見ると日本で普通に見るヤモリとは少し違って感じます。
でも、調べてみると、日本には地域によってさまざまな種類のヤモリが生息していて、模様や体の色には個体差があります。
特に夜行性のヤモリは、昼間に見る姿と夜に見る姿で印象が変わることもあります。
私は写真を見ながら、少しずつ考えが変わっていきました。
最初は、
「知らない生き物が家の前にいる」
という不安でした。
でも、よく見るとその姿はとても可愛らしい。
小さな足。
壁に張り付く動き。
じっとこちらを見る黒い目。
怖がる必要なんてありませんでした。
むしろ、こんな小さな命が我が家の玄関を選んでくれたことが少し嬉しくなりました。
昔から日本では、ヤモリは「家守」と書くことがあります。
家を守ってくれる存在として、縁起が良いと言われてきました。
もちろん迷信ではあります。
でも、家の周りの虫を食べてくれるヤモリは、人間にとってありがたい存在でもあります。
その日の夜。
玄関の灯りをつけると、まだ同じ場所にいました。
小さな体で、じっと獲物を待っている姿。
昼間見た時よりも、自然の中で生きている感じがしました。
翌朝。
確認しに行くと、もう姿はありませんでした。
どこか安全な場所へ移動したのでしょう。
少し寂しい気持ちになりました。
でも、たった数時間の出会いだったからこそ、印象に残ったのかもしれません。
写真に残った小さなヤモリ。
最初は「日本のものじゃないのでは?」と驚いた存在。
でも最後には、
「また来てくれたらいいな」
と思える、大切な訪問者になりました。
玄関先に突然現れた小さな命。
怖がって追い払う前に、少し観察してみる。
そこには、普段気づかない自然からの小さな贈り物があるのかもしれません。