私が結婚を決めた相手は、代々続く米農家の跡継ぎだった。
初めてその人の実家を訪れた時、私は広がる田んぼの美しさに息を呑んだ。季節ごとに表情を変える大地、朝早くから働く家族の姿、手間を惜しまず土と向き合う暮らし。都会育ちの私には未知の世界だったが、不思議とそこには、数字では測れない確かな豊かさがあった。
彼は口数の多い人ではなかったが、誰よりも誠実だった。
天気を読み、土を見て、稲の様子を細かく気にかける。その真剣な横顔を見ているうちに、私はこの人となら穏やかで強い家庭を築けると確信した。農業は決して楽な仕事ではない。自然相手で思うようにならないことも多いし、世間にはいまだに「農家は大変で地味」という偏見も残っている。それでも彼と、その家族が懸命に守っているものには、本物の誇りがあった。
だから私は、結婚式を挙げる時、家族みんなに心から祝ってほしいと思っていた。
特に弟には、小さい頃から一緒に育ってきた分、せめて晴れの日くらいは笑顔でいてほしかった。
ところが、そんな私の願いは、招待状を送った直後に無残に踏みにじられた。
弟夫婦から届いた返事は、あまりにも露骨で、あまりにも下品だった。
「農民と親戚とか無理w 絶縁で!」
「他人に祝儀は不要w」
最初、その文面を見た時、私は意味が理解できなかった。
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