受験会場を出た瞬間から、胸の奥に重い石が沈んでいた。手応えは、正直に言えばなかった。だから発表を待つまでもなく、結果は分かっていたのかもしれない。それでも、帰り道の電車に揺られながら「もしかしたら」と小さく願ってしまった自分が、情けなくて苦しかった。
駅を降り、家へ向かうはずの足が、なぜか公園へ逸れた。冷えた夕方の空気が頬を刺し、吐く息が白くなる。
ベンチに腰を下ろすと、遠くで「い〜しや〜きいも」と低い声が流れた。焼き芋屋の軽トラックが、公園の入口に止まっている。
私はぼんやりと、その屋台を見つめた。受験に落ちた日くらい、何か温かいものが欲しかった。けれど財布を開いてみると、小銭が足りない。コンビニで買ったお茶の残りがあるだけだった。
そのとき、少し離れた木の陰に、ひとりの少女が立っているのが見えた。白いコートに、上品な帽子。髪はきちんと整えられ、姿勢も不思議なくらい美しい。年は私と同じくらい、いや、少し下かもしれない。彼女は焼き芋屋をじっと見つめたまま、近づこうとしない。
「……食べたいのかな」
私は勝手にそう思った。貧しそうには見えない。
むしろ“お嬢様”という言葉が似合う。でも、何かを我慢しているような目だった。私は躊躇しながらも立ち上がり、焼き芋屋で一本買った。熱い袋が手に伝わり、指先がじんわり温まる。
ベンチに戻り、芋を二つに割る。湯気が立ち上り、甘い香りが鼻をくすぐった。私はその半分を、木の陰の少女にそっと差し出した。
「よかったら、半分どうぞ。……私、食べきれないから」
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