「人間ドックのこの検査、無意味です。」――そう言い切る医師の声は静かだが重い。受診票のオプション欄で、毎年のように“念のため”と丸を付けてきた人ほど、胸の奥がざわつくはずだ。採血だけでがんのリスクが分かる。そんな手軽さは、不安に寄り添う顔をして近づいてくる。しかし、その優しさが本当に命を守るとは限らない。
医師が「自分なら絶対に受けない」と語る検査の一つが腫瘍マーカーである。
腫瘍マーカーとは、がんがあると増えるとされるタンパク質やホルモンを血液で捉え、発見に役立てるという名目の検査だ。項目にはCEA、AFP、CA19-9などが並び、まとめて“フルコース”で調べられることもある。「血液だけで分かるなら素晴らしい」と、毎年追加する人が多いのも無理はない。
だが結論から言えば、腫瘍マーカーは早期発見にほとんど役立たない。理由は二つ。第一に、がん以外でも上がることが多いからだ。たとえば肺がんの主要マーカーとされるものでも、糖尿病や喫煙などで上昇する場合がある。結果票に赤字が付けば、心は一気に最悪へ傾く。「要精密検査」の文字に追い立てられ、CTや内視鏡へ進み、費用も時間も不安も積み上がる。
説明を受けて初めて「がん以外でも上がる」と知り、「受けなければよかった」と感じる人もいる。
そして決定的なのは、腫瘍マーカー検査で死亡率が下がったというデータが世界的に示されていない点だ。医師として勧める根拠が薄いのである。第二の理由は、早期のがんでは数値が上がりにくいことがある点だ。正常値だと「大丈夫」と思い込み、体重減少や血便、長引く咳など本来の警告サインを先延ばしにしてしまう危険すらある。
腫瘍マーカーが役立つ場面があるとすれば、多くは診断後の治療効果判定や再発のモニタリングだ。入口の万能鍵ではなく、経過を追うための道具に近い。それでも人々が惹かれるのは、数字の分かりやすさと“簡単に安心したい”気持ちの強さだろう。
だからこそ、このタイトルは挑発ではなく警告だ。検査は「受けた事実」ではなく、「結果をどう解釈し、どう動くか」で価値が決まる。
安心を買うつもりの検査が不安の連鎖を生むなら、一度立ち止まり、何のための人間ドックかを問い直すべきなのである。
引用元:https://www.youtube.com/shorts/jAtN1D54Dr8,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]