台風が過ぎ去った午後、濁った川の流れに乗って、灰色のプラスチックのたらいが岸へ近づいてきた。
その中には、全身ずぶ濡れになった白い秋田犬と、まだ目も開かない2匹の子犬がいた。
公民館の避難所片づけを終え、夫の謙信と帰宅途中だった百合子は、思わず叫んだ。
「あなた、ちょっと待って」
危ないと止める夫の声も聞かず、百合子は水辺へ降り、たらいを引き寄せた。
母犬は震えながらも、子犬たちを守るように身を丸めていた。
その目には、絶望の中に残った最後の希望が宿っていた。
百合子と謙信がこの村へ移り住んだのは、わずか2か月前だった。
3人の息子はそれぞれ遠くで暮らし、連絡も少ない。
東京のマンションを手放して田舎に来たものの、静けさは思った以上に寂しかった。
特に百合子は、子育てを終えた後の空白をどう埋めればいいのか分からずにいた。
「この子たちを放っておけないわ」
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=qq75NRSnzpA,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]