――え、血…?いや、赤いペンキだ。雨で濡れた白いSUVのドアに、ドンと殴り書きみたいな赤文字が走っている。近づくと、運転席の男が固まった顔でドアを押さえ、周りの通行人も「うわ…」と足を止めている。たぶん、ほんの数分前まで普通の車だったはずなのに、いま目の前にあるのは“見せしめ”みたいな現場だ。
場所は歩道ギリギリ、赤いラインの縁。
確かに邪魔だし、違法駐車っぽい。ベビーカーや車いすが通るには窮屈だし、雨の日なら傘同士がぶつかる距離感。怒る気持ちは分からなくもない。けどさ、だからって車体にスプレーで文字を叩きつけるのは、怒りの出力が急に最終形態すぎるだろWWW
しかもこの手の“制裁系”って、やった側はスカッとするかもしれないけど、結局は器物損壊でアウト。正義のつもりが、一瞬で「加害者」に反転する。駐車した側ももちろん悪い。けど、悪いからって何してもいいわけじゃない。ルール違反を叩くために、別のルール違反を重ねたら、ただの“違反バトル”だ。
男の表情がまたリアルで、怒っていいのか謝るべきなのか、保険会社に電話するべきなのか判断が追いついてない感じ。
背後で笑いをこらえきれない人がいるのも、ネットの空気そのまま。みんな「違法駐車はともかく、これはやりすぎだろWWW」って言いたくなるやつ。
結局いちばん怖いのは、赤文字そのものより、「次は自分かも」って想像させるところだ。ちょっと停めただけ、のつもりが誰かの地雷を踏む。怒りの矛先が、注意じゃなく破壊に向いた瞬間、街は急に息苦しくなる。
だからこそ、次に必要なのはスプレーじゃなくて、通報とレッカーと、ちゃんとした罰金。笑えるようで笑えない――そんな一枚だ。