体調不良でパートを早退した私は、帰宅するなり胸の奥が冷え切った。ガレージに停めた車内から、夫・春人と女の甘ったるい声が漏れていたのである。私は物陰でスマホを構え、二人の会話と手つきを淡々と撮影した。驚きより先に、半年前から積み上げた疑念と尾行の記録が、私を異様なほど冷静にしていた。
私は出入口を塞ぎ、ブレーカーを落としてシャッターを動かなくした。
突撃はしない。逃げ道を断ち、言い逃れできない形で突きつけるためである。春人に電話を入れると、彼は平然と「急な出張」と嘘を重ねた。直後、「シャッターが開かない」と焦った声が戻ってくる。私はわざと穏やかに告げた。「今、ガレージの前にいる」。彼の声が裏返るのを聞き、静かな怒りが確信へ変わった。
次に呼んだのは、愛人レミの夫であり、春人の兄でもある友昭である。海外にいるはずの男が現れた瞬間、車内の空気は凍りついた。私が送った動画が決定打となり、シャッターを上げると、震える春人と顔を隠すレミがいた。友昭の叱責に、春人は言い訳し、逆ギレし、最後は膝から崩れ落ちた。レミが既婚者だと突きつけられ、春人の幻想は粉々になった。
私は追加の写真束――ホテルの出入り、路上で手を繋ぐ姿――を床に落とし、「一度きりではない」と告げた。友昭は離婚届を差し出し、私は春人にも離婚を宣言した。なおも逃げようとしたレミが車で暴走しシャッターに突っ込む騒動まで起きたが、近隣の通報で警察が収めた。欲望の代償は、二人に等しく返ってきたのである。
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