退院の日、私は長い闘病生活を終えて家に帰れると思っていた。だが、息子・正宏の言葉が私の期待を一瞬で打ち砕いた。病院の玄関で彼は冷たく言い放った。「母さん、今後は面倒を見ないから。」その言葉が耳に入った瞬間、私はしばらく声を出せずに立ち尽くした。長年家族のために尽くしてきた私に、突然突きつけられた冷徹な現実に、胸が張り裂けそうだった。

十年前、夫を亡くし、息子のために全てを捧げてきた。正宏は家計に苦しんでいた時期、私は全力で支え、家を建てるために私の年金を提供した。私がいなければ、今の生活は成り立たなかっただろう。しかし、そのことに対する感謝の言葉は徐々に薄れ、今では当たり前のように扱われていた。

退院後、家に帰ると、さらに衝撃的な言葉が待っていた。「明日までに出て行ってください。どこでもお好きなところへ。」それは、私がこれまで家族のために尽くしてきたすべてを否定する言葉だった。心の中で何かが静かに決まった瞬間だった。

正宏とその妻・留美は、私の存在を家の中で当たり前のものとして扱い、私が入院していた間も、家事の手伝いすらしてくれなかった。私は家族のために必死で働き、何も言わずに支えてきたが、今では「家政婦」のように扱われている自分を痛感していた。

その日の夜、私は一人で涙を流しながら考えた。これまでの十年、私は本当に尽くしてきたのだろうか。

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