「ご自宅が火事です。中にご主人がいるようです!」
夕食の席で、消防署から突然かかってきた電話に、私は一瞬息を止めた。
けれど次の瞬間、目の前に座っている夫を見て、思わず聞き返していた。
「今、夫と家で食事中ですけど?」
電話口の消防士が「え?」と戸惑った声を漏らした。
そのやり取りを聞いていた夫の龍平は、箸を持ったまま顔を真っ青にしていた。
私、桜子は三十一歳の時、知人の紹介で龍平と結婚した。
一つ年下の彼は少し頼りないところもあったが、穏やかで、私の仕事を心から応援してくれる人だった。
私は消防士として働いている。
幼い頃からの夢であり、誇りを持って続けてきた仕事だった。
過去には「女性が消防士なんて危ない」「結婚したら家庭に入ってほしい」と言われ、恋愛がうまくいかなかったこともある。
だからこそ、龍平が「働いている桜子はかっこいい」と笑ってくれた時、この人なら私を理解してくれると信じた。
しかし結婚して間もなく、龍平は会社の人間関係に悩むようになった。
上司が変わり、急に仕事量が増えたらしい。
帰宅は遅く、休日出勤も続き、日に日に表情が暗くなっていった。
私は三か月ほど見守ったが、やつれていく夫を放っておけなかった。
「本当に辛いなら、仕事を辞めてもいいのよ」
私一人の収入でも生活はできる。
次の仕事を探してもいいし、しばらく家事をしてくれてもいい。
そう伝えると、龍平は安心したようにうなずいた。
翌月、彼は会社を辞めた。
最初のうちは、家もきれいで、夕食も用意されていた。
私は少しずつ龍平が元気を取り戻していくのだと思っていた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=PMdJVL10LQk,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]