冬の夜、居間にはこたつの柔らかな熱と、家族の気配が静かに満ちていた。仕事から戻った私は、今年もこの季節が来たのだと実感しながら、上着を脱いでこたつに足を入れた。外は冷え込んでいたが、こたつの中は別世界のように暖かい。子どもたちはすでに部屋を出ており、妻はこたつでうとうとと眠っている――そう、私はその時、完全にそう思い込んでいた。
少し悪戯心が芽生えたのは、ほんの出来心だった。足を伸ばすと、向こう側に誰かの足先が触れる。驚かせてやろう、そんな軽い気持ちで、私は足裏をそっと押してみた。反応がない。眠っているのだろう、と判断した私は、さらに指でぐっと力を入れ、いわゆる足つぼのような動きを加えた。
すると、低く落ち着いた声がこたつの向こうから聞こえてきた。「あら、足のマッサージ? なかなか上手じゃない」。その一言で、私の背筋は一気に凍りついた。聞き慣れたその声は、妻のものではない。義母だった。
慌てて足を引こうとしたが、時すでに遅し。義母は落ち着いた口調で、「最近、足が冷えてね。ちょうどよかったわ」と続ける。
私は完全に逃げ場を失い、ただ無言でマッサージを続けるしかなかった。頭の中では、なぜこうなったのか、どうやって誤解を解くべきかが渦巻いていた。
義母はこたつでテレビを見ながら、まるで何事もないかのように世間話を始めた。私は相槌を打ちながら、内心では冷や汗が止まらない。妻が戻ってきたらどう説明すればいいのか。その不安が、手の動きをぎこちなくさせたのだろう。
「力が弱いわね」と義母に指摘され、私はさらに焦った。
しばらくして、台所の方から妻の足音が聞こえた。私は一瞬、覚悟を決めたが、義母は何事もなかったようにこたつから足を引っ込め、「ありがとう、体が温まったわ」と微笑んだ。その自然な振る舞いに、私はただ深く頭を下げるしかなかった。
後で妻に問い詰められることはなかったが、あの夜の出来事は、私の中で強烈な教訓として残った。
軽い気持ちのイタズラが、思わぬ誤解と緊張を生むこともある。こたつの暖かさの裏で、私は家族との距離感と節度の大切さを、身をもって学んだのである。
それ以来、こたつに入るたび、私は必ず向こう側を確認するようになった。あの冬の夜の静かなスリルと冷や汗は、今でも忘れられない記憶として心に刻まれている。
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=0DK_jQjUGwA,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]