東京の夜は、いつもどこか冷たかった。
仕事を終えた美咲は、駅前のコンビニでいつものように弁当を買い、重たい足取りで自宅へ向かっていた。忙しい毎日に追われ、帰宅する頃には簡単な食事を済ませ、眠るだけの日々。そんな生活が当たり前になっていた。
以前なら、母に電話をして「今日こんなことがあったよ」と話していた。しかし最近は、仕事の疲れを理由に連絡する回数も少なくなっていた。
「今度、ゆっくり話そう」
そう思いながら、何度も先延ばしにしていた。
北海道の小さな町で一人暮らしをしている母。数年前に父を亡くしてから、広い家で一人、静かに暮らしていることは分かっていた。
それでも美咲には、東京での生活を守ることで精一杯だった。
「お母さんも元気だから大丈夫」
そう思い込んでいたのかもしれない。
そんなある日の夜、自宅の玄関前に小さな荷物が置かれていることに気づいた。
送り主を見ると、そこには北海道に住む母の名前があった。
「お母さんから?」
不思議に思いながら箱を開けると、中には丁寧に包まれた手作りのおかずと、一通の手紙が入っていた。
手紙には、母らしい少し丸みを帯びた字でこう書かれていた。
「美咲へ。急にあなたの好きだった料理が食べたくなって、作っちゃいました。冷めても美味しいけど、温めて食べてね」
その瞬間、美咲の胸の奥が少しだけ締めつけられた。
箱の中には、昔から大好きだった煮物や、母特製の卵焼きが入っていた。
懐かしい匂い。
子どもの頃、学校から帰ると台所から漂っていた香り。
疲れて泣きそうな日も、母の料理を食べるだけで不思議と元気になれた。
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引用元:https://www.youtube.com/shorts/kUTu5ZXpBiQ,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]