兄が亡くなってから、私は初めて兄の部屋に入った。
生前、兄はいつも「俺の部屋は自分で片付けるから」と言っていた。どれだけ散らかっていても、誰かに触られることを嫌がっていたのだ。
だから私は、兄がいなくなった後も、しばらくその部屋のドアを開けることができなかった。
そこには、まだ兄がいるような気がしたからだ。
机の上には読みかけの本が置かれ、ベッドの横にはいつも履いていたスニーカーが並んでいた。
クローゼットを開ければ、兄の匂いが残っているようで、胸が締め付けられた。
「本当に、もう帰ってこないんだな……」
そう呟いた瞬間、涙が止まらなくなった。
兄は私にとって、ただの兄ではなかった。
父が仕事で家を空けることが多く、母も病弱だった我が家で、兄はいつも私を守ってくれる存在だった。
私が学校で嫌なことがあった日には、何も聞かずにコンビニのアイスを買ってきてくれた。
受験で失敗して落ち込んでいた時には、
「人生なんて何回でもやり直せる。お前はお前のままでいいんだ」
と励ましてくれた。
自分のことより、いつも私のことを優先するような人だった。
そんな兄が突然いなくなった。
事故だった。
あまりにも突然の別れで、私は心の準備など何一つできていなかった。
葬儀が終わって数週間が経った頃、家族で話し合い、少しずつ兄の部屋を整理することになった。
私は一人で掃除をすることにした。
兄との思い出が詰まった部屋を、他人の手で片付けられるのが嫌だったからだ。
机の引き出しを開けると、昔の写真や、使いかけの文房具、学生時代のノートなどが出てきた。
一つ一つ手に取るたび、兄との記憶が蘇ってきた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=ss_d2t3WENI,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]