娘・沙織の一か月検診の日、私は夫・達也と並んで病院の待合室に座っていた。診察は順調で、医師から「健康そのものです」と告げられ、胸をなで下ろした――はずだった。看護師が近づき、なぜか私だけを呼ぶ。「こちらへ」。娘を抱えたまま案内された小さな別室で、異動してきたばかりの担当医が扉を閉め、私の目をまっすぐ見据えた。
「今すぐ逃げなさい!」
冗談の響きは一切なかった。私の背筋が凍り、腕の中の沙織を反射的に強く抱きしめる。戸惑う私に医師は、息を整えるように短く言った。「あなたの夫を、以前別の病院で見たことがある」。そこから語られた内容は、信じがたく、残酷だった。
達也は三つ年上で、職場恋愛から結婚した。結婚当初は、朝一緒に家を出て夜に出来事を報告し合う、理想的な夫婦だった。子どもはしばらく作らず仕事に集中しよう、と話し合っていたのに、結婚一年で達也が急に言い出した。「そろそろ子どもを作らないか」。異動先の同僚に影響されたらしい。私は悩んだ末、「出産後も働き続ける」を条件に同意し、ほどなく妊娠した。達也は泣きそうな顔で「ありがとう」と抱きしめ、妊娠初期は過剰なほど私を大事に扱った。
しかし安定期に入ると彼は変わった。帰宅は遅くなり、連絡も減り、休日も外出ばかり。話しかけても生返事。ある晩、私が「最近冷たくない?」と尋ねた瞬間、彼は料理を腕で払い落として床にぶちまけた。「人が疲れてる時にふざけんなよ」。割れた皿と飛び散った汁物を前に、私はただ謝った。夫婦円満のためだと自分に言い聞かせ、黙って耐えた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=Vurmg0Pf2Uo,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]