68歳の石田かず子さんは、夫を亡くしてから8年、一人でつましく暮らしていた。離婚した息子の大輔さん(48歳)が「少しだけ置いて、仕事が落ち着いたら出ていくから」と実家に戻ってきたのは5年前のことだ。最初の1ヶ月は求人サイトを見るような素振りもあったが、次第に朝起きられなくなり、昼過ぎに起きて冷蔵庫を開ける音だけが響く生活になった。
食器は洗いっぱなし、脱いだ靴下は床に落ちたまま、コンビニ袋が階段に転がるようになった。
アルバイトを始めても数ヶ月で辞め、派遣の仕事が決まっても長続きしない。理由を聞けば「俺だって好きでこうなってるわけない」と返される。その言葉にかず子さんは責める気力を失っていった。生活費は増える一方で、かず子さんは病院代を先延ばしにし、友人との食事も断り、スーパーでは値引きシールの棚に手を伸ばす日々が続いた。
年金支給日の翌朝、財布から1万円が足りないことに気づいたかず子さんは、昼過ぎに起きてきた大輔さんに尋ねた。「取ったの」「借りただけ」「何に使ったの」「別にいいだろう」。押し問答の末、大輔さんは「スマホの支払いと、ちょっと課金」と答えた。
かず子さんは耳を疑った。病院代でも交通費でもなく、ゲームの課金画面に自分の年金から抜いた1万円が使われていたのだ。
「親なんだからそのくらい支えてくれてもいいだろう」。大輔さんのその言葉に、かず子さんはこれまでの5年間の我慢の意味を見失いそうになった。妹のマリに電話をかけると「お母さんが甘やかすからお兄ちゃんが動かないんでしょう」と言われ、それでも自分の家には引き取れないと返された。
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