嫁いで3日目の深夜、喉の渇きで目を覚ました女性は、隣に夫・匠の姿がないことに気づいた。麦茶を取りにキッチンへ向かう途中、リビングの引き戸の向こうから漏れる声に足を止める。
「いつ処分する?もう3000万円の生命保険の手続きは終わってるんだろうな」。夫の冷たい声だった。「抜かりはないわよ。受け取り人はもちろん匠にしてあるわ」。
義母のしずが答えた。二人が話していたのは、女性の亡き両親の遺産5000万円と、女性自身の貯金1000万円、合計6000万円の使い道と、女性にかけられた3000万円の生命保険についてだった。夫の会社の借金、義母のパチンコの借金を清算するため、新婚旅行先の海で「不幸な事故」に見せかけて処分する計画が語られていた。
女性は音を立てずに寝室へ戻り、財布、通帳、実印、パスポートだけをバッグに詰め、窓から庭へ抜け出した。逃げる途中、スマートフォンに着信があった。相手は、亡き父の代から仕える専属弁護士の神崎だった。迎えの車に乗り込んだ女性に、神崎は彼女の本当の正体を告げる。彼女は大手企業グループの筆頭株主であり、匠に伝えていた6000万円は、いわばダミーの資産に過ぎなかった。
女性はあえて自宅に戻り、6000万円の通帳を匠に「全財産」として渡し、彼らを泳がせることにした。だが数日後、匠の自宅の監視映像には、匠の愛人である若い女性社員が家に招き入れられ、亡き母の遺したレシピノートを侮辱し破り捨てる様子が映っていた。さらに女性は地下室に監禁され、株の譲渡書類へのサインを迫られる事態に発展する。
女性を助け出したのは、匠の愛人を調べていた探偵の木島だった。
彼女はそこで、匠たちの裏に本当の黒幕がいることを知る。夫を裏で操っていたのは、彼女の実の叔父であり、亡き父の弟だった。叔父は女性の正体を知り、莫大な資産の乗っ取りを企てていたのだ。
女性は弁護士や協力者たちと共に、偽の株式譲渡書類や借金の買い取りなど、幾重にも罠を張り巡らせる。株主総会の場で、女性は死亡したはずの姿で登場し、叔父の企てを公の場で暴いた。
さらに、亡き父が生前に残していた映像メッセージにより、叔父が実の兄を毒殺していた事実まで明らかになる。
最終的に、匠、義母、愛人、叔父の四者はそれぞれの借金や不正が一つに繋がり、逃げ場を失って警察に連行された。女性は父の遺志を継ぎ、企業グループの正当な後継者として社長の座に就いた。