第三十七師団の隊員食堂には、いつものように昼食を知らせる食器の音が響いていた。
二千人を超える隊員たちが整然と列を作り、限られた時間の中で食事を受け取っていく。その光景だけを見れば、規律ある自衛隊の一日常に見えた。
しかし、その食堂には誰にも知られていない大きな問題が潜んでいた。
その日、列の中に一人の女性が静かに並んでいた。
高橋優子陸将補、四十五歳。
服装は古びた灰色のスニーカーに、どこにでもある黒いジャンパー。手には小さなクリップボードだけを持っていた。
誰が見ても、外部から来た点検員か、業者関係者にしか見えなかった。
彼女は周囲を観察しながら、黙って自分の順番を待っていた。
そして、受け取った食事を見た瞬間、表情がわずかに変わった。
炊き上がっていない硬いご飯。
酸っぱい臭いを放つ漬物。
油が浮いた味噌汁。
そして、申し訳程度に盛られたおかず。
高橋は何も言わず席へ向かった。
隣に座った若い隊員が、小さな声でつぶやいた。
「また今日もこれか……」
その声には諦めが混じっていた。
隊員たちは文句を言わなかった。
言える雰囲気ではなかった。
高橋は静かにスプーンを置き、クリップボードに記録を始めた。
食事の温度。
料理の状態。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=NzJ07SgWwuE,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]