北海道最北端に位置する第三師団司令部。その冬の朝、気温は氷点下二十度近くまで下がり、吐き出された白い息さえ瞬く間に冷気の中へ消えていくほどの厳しい環境だった。
そんな極寒の中、司令部裏手の配送庫付近で、一人の男の下品な笑い声が響いていた。
「特殊作戦群出身だか何だか知らねえが、女なんてものは頬を一つ叩けば大人しくなるんだよ」
そう言い放ったのは、本部隊長を務める少佐・中村健治だった。
煙草をふかしながら、周囲の将校たちに自分の優位性を示すように振る舞う中村。しかし、その態度の裏側にあったのは実力ではなく、劣等感と嫉妬だった。
まもなく第三師団には、新しい師団長が着任する予定だった。
その人物は、防衛大学校を首席で卒業し、さらに伝説的な特殊作戦群で数々の任務を経験した女性指揮官、田中由美だった。
「噂では相当な人物らしいですよ。特殊作戦群でも認められた人間だとか……」
部下が慎重に口にすると、中村は鼻で笑った。
「女が出世できる理由なんて決まっている。上層部に気に入られたか、特別扱いされたかだ」
彼はいつもそうだった。
自分の昇進が遅い理由を努力不足ではなく、女性隊員や周囲の人間のせいにする。強い相手には媚び、反撃できない相手には威圧する。
そんな男だった。
しかし、その会話を聞いている人物がいた。
「その口……随分と軽いようだな」
背後から聞こえた冷たい声に、中村たちは一斉に振り返った。
そこに立っていたのは、一人の女性だった。
古びた戦闘服を身につけ、帽子を深くかぶっている。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=8qt1BJec85Q,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]