「コンビニ」とは便利の象徴――その言葉を、私は改めて疑った。全国に約2万1400店。セブン‐イレブンにこれほど商品が揃うなら、“それっぽい”フルコースが作れるのではないか。二年前にローソン縛りで挑戦した際、「次はセブンで」と紳士淑女のコメントが押し寄せた。ようやく重い腰を上げ、台所を実験室に変える。
一皿目はコンビーフ×チーズの一口。
崩したコンビーフでチーズを包み、冷やして形を固め、粉をはたいて揚げる――はずだった。だが初手から壁だ。しょっぱすぎる。そこでセブンの豆とポテサラを加え、芋をマッシュして塩気を丸め、衣をまとわせる。揚げた瞬間の香りに救われた。外はサクッ、中はポテトの甘みとブルーチーズ風のコク、コンビーフが最後に鋭く締める――招待客が一斉に前のめりになる味だ。
前菜は〆鯖とタコ。薄切りのタコに蜂蜜黒酢を絡め、柑橘の泡で輪郭を立てる。冷凍枝豆は小鍋で柔らかく煮てミキサーへ。舌に広がる枝豆の滑らかさの上に、酸味の泡が落ちると、海の旨みが一段と澄んだ。皿の中央に静かに盛るだけで、気配が“店”になるから不思議だ。
続く冷製スープは、旬のコーン缶をバターで炒めて香りを起こし、残った汁ごと攪拌する。牛乳ではなく豆乳で軽く整え、焦がし醤油の香りをひと撫ですると、缶詰のはずの奥行きが生まれた。スプーンを入れた瞬間、甘さが立ち、後から香ばしさが追いかけてくる。
メインは「金の」ビーフシチュー。赤ワインを煮詰め、艶が鏡のように立つまで凝縮した“切れ”を加える。
添えるのは、ポテサラを裏ごしし、バターと少量の牛乳で絹のようにしたマッシュポテト。濃厚な肉の深みが、芋の静けさに抱き留められる。パンを添えれば、ソースの余韻まで逃さない。
デセールは桜レモン。輪切りレモンを外し、中身を崩して冷やし固め、ほのかな甘みで酸を整える。グラスに盛れば、メインで濃くなった口の中が、最後に凛と解けた。
革命は大げさではない。セブンの棚は、もう厨房の延長だった。
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=dsjuoGXFMQk,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]