新幹線の二人席で、隣の男がわざと足を大きく広げてきた。
最初は、ただの癖なのかと思った。
でも違った。
私の膝の前まで、男の足が堂々と入り込んでいる。
しかも靴先が、私のバッグに当たっていた。
私は小さく息をつき、できるだけ穏やかに言った。
「すみません、ちょっと狭いんですが。
」
男は一瞬こちらを見た。
でも何も言わない。
そして――足を引くどころか、さらに広げた。
明らかにわざとだった。
私は思わず眉をひそめた。
二人席なのに、私のスペースがほとんどない。
体を窓側に寄せても、男の膝がこちらに押し込んでくる。
その態度があまりにも露骨で、
逆に笑いそうになった。
若い女だから、文句を言わないと思ったのだろうか。
それとも、我慢すると思ったのか。
私はもう一度言った。
「足、少しだけ閉じてもらえますか?」
男はまたこちらを見た。
そして小さく鼻で笑った。
何も言わないまま、
さらに足を広げた。
今度は完全に、私のスペースに侵入していた。
周りの人も気づいているのか、
ちらちらこちらを見ている。
でも誰も何も言わない。
私は数秒、黙っていた。
そしてふと思い出した。
父が、すぐ後ろの席に座っていることを。
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